調香師が描くもの
現在でもたくさんのフレグランスブランドが誕生し続けていますが
近ごろは、素敵な香りをクリエイトし続けている「調香師」という人たちにもスポットが当たる機会が多くなってきているように思います。
わたしは、造り手が注目されることはとても素敵なことだと思っています。
世界中のフレグランス業界で活躍するトップ調香師から、どこにも属さずに自分のこだわりと独自性を追求し続けるインディーズ系の調香師まで、さまざまです。
そのバックグラウンドも、独学で学び技術を身につけたという人から、調香の世界では超エリートであるフランスの某学校でみっちりと訓練し、大手企業で下積みから上りつめてきた人まで、これまた多種多様。
でも、著名な調香師の方々が生み出した香りに触れてみるとおもしろいもので
あぁ、これは〇〇さんぽい!
なんか、〇〇さんなのに意外!
なんて、調香師のクセや得意分野を知ったように感じて想像してしまうなんとも偉そうな自分がいます。。
一歩を踏み出した自分も、世界中の偉大な方たちから、そのエッセンスを大切に学んでいきたいと思います。
さて、調香のことは調香師に聞くのが一番、ということで
実際に活躍されている方から話を伺うチャンスが最近ありました。
その方のお話によると、新しい香りを生み出すプロセスは、調香師自身の記憶や鮮やかな体験がもとになっていることがある、ということでした。
大手では、市場調査した上でこんな香水を作ってほしいと打診するオーナー側
対
それに頑張って応えるという調香師
という、商業的な図がどうしても浮かびますが
最近注目されている一部のフレグランスブランドは
オーナーの方針により、ブランドの世界観は崩さずに、それぞれの調香師のセンスとアートを尊重して香りを生み出しているようで、それがとても自由で面白いと感じました。
調香師が自由に、己の感性と香りのパレットを用いて、ボトルの中の液体に命を吹き込むようすは、さながら「香りの魔術師」。
色鮮やかな心象風景
自身の心がうち震えた瞬間
だれかと共有したいユニークな旅の思い出
濃密に息づくベールの裏の情事・・・
全部が生き生きとした物語として、香りに立ち上ってくるようでワクワクしますね。
ちなみに聞いたエピソードの中でおもしろいと感じたのが
ある外国人の女性調香師が、日本の山寺を訪れたときにたまたま遭遇したニホンザルの姿が、なんとも言えずユーモラスでピースフルだったと。
お寺も含めた背景の景色ごと切り取った香りとのことでした。
ちなみにそちらが
ズーロジスト(Zoologist )のマカク(Macaque)
ProficeのHPより
実際は爽やかでみずみずしく、グリーンとフルーティさを感じますが、お茶のような日本らしい香りもあり
静けさを感じさせる使いやすい香りでした。
こうして貴重なお話を聞いたり
新旧問わず新しい香りに触れるたび
この世界の懐の深さと無限の表現力に驚きつつ
調香師のつとめの中には
自分の中の引き出しを増やすこと
すなわち
プラスもマイナスも含めた心揺さぶられる体験をストックしていくことが、表現の幅につながることを改めて思っています。
エニシカ ラボ
シイカ